【栄養】体重の増量、減量の考え方の基本

増量も減量(ダイエット)も考え方は同じで、ある原則に則り行う必要がありますが、筋トレーニーや栄養オタク以外はあまり意識していないのが現状ではないでしょうか?
本投稿は初歩的な内容ですが、これに尽きるといったものですので、覚えておけば一生役に立つはずです。

ある原則とは?

体重の増減は下図の概念で考えられています。(注1より)

図1. エネルギー出納バランス

エネルギー摂取量”よりも”エネルギー消費量”が多ければ体重は増え、少なければ体重は減ります。
……体重の増減は基本これしかありません。
〇〇を食べれば痩せるとか、〇〇を食べなければ痩せるとか、それは小手先の話であって本質ではありません。

ちなみに、エネルギーとは、人間の生命活動においては所謂カロリー※1のことです。
※1 エネルギーの単位であり、1kcalは水1Lの温度を(1気圧のもとで)1℃上昇させるのに必要なエネルギーと定義されている

エネルギー摂取量

ところで、人間が摂取する主な栄養素を図2にまとめました。 (注2より)

図2. 六大栄養素

※2 炭水化物とは糖質と食物繊維の総称の事ですが、文脈によっては糖質だけを差して”炭水化物”と書かれていることも多い

人間が生きていくのにはこれら六大栄養素が必要ですが、このうちの三大栄養素(マクロ栄養素)から人間はエネルギー(カロリー)を摂取しています※3

3 アルコール(エタノール)にもカロリーがありますが、必須栄養素ではないので除外

PFCバランス

三大栄養素のたんぱく質、脂質、糖質にはそれぞれ異なる役割があり、健康を維持するためにはこれら三大栄養素の摂取バランスを考える必要があります。
たんぱく質 (Protein)脂質 (Fat)糖質 (Carbohydrates) の頭文字をとってPFCバランスと言います。
摂取カロリーはたんぱく質脂質糖質をそれぞれ何[g]摂取したかを図ることで計算することができます。
小売されている加工食品には必ず「栄養成分表示」欄にそれぞれ何[g]含まれているかが書かれていますし、生鮮食品はGoogleで検索すればほとんど知ることができます。

1[g]あたりのカロリーは下記のようになっています。(注1より)

栄養素1[g]あたりのカロリー
(Atwater係数)
たんぱく質 4 [kcal]
脂質9 [kcal]
糖質4 [kcal]

例えば、一日にたんぱく質を80[g], 脂質を70[g], 糖質を350[g]食べたなら、次式により摂取カロリーは2,350[kcal]と算出されます。
(80[g] × 4[kcal/g]) + (70[g] × 9[kcal/g]) + (350[g] × 4[kcal]/g) = 2,350[kcal]

また、総摂取カロリーに占める各栄養素の割合は
・たんぱく質の割合 : (80[g] × 4[kcal/g]) / 2,350[kcal] ≒ 13.6%
・脂質の割合 : (70[g] × 9[kcal/g]) / 2,350[kcal] ≒ 26.8%
・糖質の割合: (350[g] × 4[kcal/g]) / 2,350[kcal] = 59.6%

つまり、この場合のPFCバランスは↓となります。
P:F:C = 13.6 : 26.8 : 59.6

推奨されるバランスは?

厚生労働省による目安は、下記の通りです。(注1より)

年齢 目標量 [%]
男性 女性
たんぱく質 脂質 糖質 たんぱく質 脂質 糖質
1~49 13~20 20~30 50~65 13~20 20~30 50~65
50~64 14~20 20~30 50~65 14~20 20~30 50~65
65~ 15~20 20~30 50~65 15~20 20~30 50~65

標準体重を維持する場合はこのようなPFCバランスを目安にするとよいですが、たんぱく質量については注意が必要です。

たんぱく質を減らす選択肢は無い

たんぱく質は体(骨、臓器、筋肉)やホルモンの材料になりますから優先して最低限量は確保する必要があり、ダイエットをするにしても、多くの場合はたんぱく質量を減らす選択肢はありません。
たんぱく質の欠乏は免疫力の低下、筋肉量の減少、老化の促進などの問題があります。※4

※4 脂質も細胞膜やホルモンの材料になるため欠乏は問題だが、厚生労働省(注1)の”平成28年度 国民健康・栄養調査”での脂質摂取量中央値は下限値を十分に上回っており、多少制限をしても欠乏の恐れは低いと思われる

厚生労働省によると、体重1[kg]あたり、一日にたんぱく質0.66[g]程度必要とのことです。
例えば体重60[kg]の人が必要なたんぱく質量は、 60[kg] × 0.66[g/kg] = 39.6[g]
筋肉量が多いなど、体組成によってはより高い係数が必要かもしれません。

そこでダイエットにおいては糖質か脂質、あるいはその両方の摂取量を減らすことが考えられるわけです。

 ・脂質を減らす場合 → 脂質制限
 ・糖質を減らす場合 → 糖質制限(突き詰めるとケトジェニックダイエット)
 ・両方を減らす場合 → 特に名前はない

ダイエットをする場合、何にせよ結局はたんぱく質量を維持しつつ、カロリー摂取量を抑えることに尽きます。

エネルギー消費量

カロリーの収支を考えるのですから、消費量についても知る必要があります。
一般的なのは下記の算出方法です。
一日のエネルギー消費量[kcal/日] = 基礎代謝量 × 身体活動レベル

基礎代謝量

基礎代謝量とは、一日中横になっていても消費されるエネルギー量のことです。
一般的には下記のように標準体重と基礎代謝基準値から算出します。

①まず標準体重を求める
 標準体重[kg] = 身長[m] × 身長[m] × 22[kg/(m*m)]
②求めた標準体重に基礎代謝基準値を乗算
 基礎代謝量[kcal] = 基礎代謝基準値[kcal/(kg*日)] × 標準体重[kg]

厚生労働省が公表している年齢別の基礎代謝基準値および基礎代謝量のサンプルデータは下記の通りです。(参考 注1より)

年齢 基礎代謝基準値 [kcal/(kg*日)]
男性 女性
15~17 27.0 25.3
18~29 23.7 22.1
30~49 22.5 21.9
50~64 21.8 20.7
65~74 21.6 20.7
75以上 21.5 20.7

30歳の身長170[cm]の男性Aさんなら、基礎代謝量は約1,430[kcal/日]となります。
標準体重: 1.7[m] × 1.7[m] × 22[kg/(m*m)] = 63.58[kg]
基礎代謝量: 22.5[kcal/(kg*日)] × 63.58[kg] ≒ 1,430[kcal/日]

身体活動レベル

身体活動レベルは例として下記のように定義されています。(注1より)

身体活動レベル 低い ふつう 高い
1.50 1.75 2.00
日常生活の内容 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合

Aさんが特に運動習慣のない徒歩通勤のオフィスワーカーであれば、”ふつう(1.75)”に当たると言えます。
Aさんの基礎代謝量は1,430[kcal/日]だったので、身体活動レベルを乗算すると
1,430[kcal/日] × 1.75 = 2502.5[kcal/日]
一日の消費カロリーは2502.5[kcal/日]と算出できました。

体脂肪1[kg]を減らすには7,200kcalのマイナスが必要

世間的には、目安として7,200kcalをトータルでマイナスにすると体脂肪が1[kg]減ると言われています。(注3より)
例えば消費カロリーよりも摂取カロリーが300kcal低い状態を24日続ければ1[kg]体脂肪が減るということです(7,200[kcal] ÷ 300[kcal/日] = 24[日])。

1日の消費カロリーが2502.5[kcal/日]であるAさんは、一日の摂取カロリーを2200[kcal]くらいにすると、大体24日で体重が1[kg]減少する、という目安が得られました。

まとめ

エネルギー摂取量”よりも”エネルギー消費量”が多ければ体重は増え、少なければ体重は減るという前提のもとで、増量するにしても減量するにしてもPFCバランスを考えた食事をしよう、という話でした。
まずは普段自分が何kcal摂取しているのか、一度計算してみることが初めの一歩かもしれません。

参考
注1) 厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書』https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html, (参照 2021-08-20)
注2) 飯田薫子/寺本あい (2019) 『一生役立つ きちんとわかる栄養学』西東社
注3) TANITA『カロリーとは | 健康の作り方 | タニタ』https://www.tanita.co.jp/health/detail/28, (参照 2021-08-20)

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